おひとり様は孤独だと思われがちなのですが、果たしてそうなのでしょうか。

個として、生きている事実は変わらないものの、その人が寂しいと感じているか否かは、その人の内面の問題なので、他人がうかがい知ることはできません。

たとえば、僕はかつてよく一人旅をしていましたが、バイキングの食事会場で、家族連れの子供の一人から指をさされたことがあります。

「あ、あの人、一人」とね。

子供に悪気はあるわけはなく、単純に気づいたことを声にしただけでしたが、その親はバツの悪そうな顔をして子供をたしなめていました。

僕はおかしくなって笑っていましたが、もしこれが、普段から強く孤独を感じている人であれば、この一件だけで落ち込んだとしても不思議ではありません。

同じ水を飲んで牛は乳を作り、蛇は毒を作る、と言います。

同じ体験をしても、受け取り方や感じ方はさまざまなのです。

さて、高齢者の寂しさはおひとり様よりも家族の中での孤立のほうが大きい、と改めて思ったのは、ある人生相談を読んだからなのです。

その女性は、息子夫婦と暮らしているのですが、息子夫婦から疎外されているそうなのです。外出も外食も自分だけ外され、話もしてもらえない、とのことでした。

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でも将来自分がさらに高齢になったときのことを考えて、不満も言わずに我慢しているそうです。

僕は、常々、ひとり者の孤独などたかが知れている、と思っています。

本当の孤独は、家族の中の孤独であり、集団の中の孤独です。とりわけ、家族の中の孤独はきついであろうことが想像できます。

家族の中にいることがきつければ、家族から離れる選択肢があってもいい。ただ、そのためにも、まず、個として、独立していなければなりません。

精神的にも、経済的にも、です。