今朝、父が珍しく、自分からベッドを出て座りたいと言い出しました。

 寝てばかりではどんどん体力が落ちてしまうため、こちらが父を促して、椅子に座らせるのが常でした。ところが今朝は、自分から起き上がり、椅子に腰かけたのです。すぐに、パルスオキシメータを指先に挟み、酸素飽和度を測定しました。一度、65というとんでもない数字を示しましたたが、すぐに上昇し、86ぐらいでとどまりました。

 86でも、健常者に比べれば、まだだいぶ低い値なのですが。

 椅子に座っても、すぐにベッドに戻りたがる父にしては、異例に長く、椅子に座っていました。

 僕は、この機会をとらえ、父の伸びた髪の散髪と、髭剃りを試みました。寝ているときにやるよりも、はるかに作業がはかどりました。散髪した後も、父はベッドに戻ろうとせず、しばらくは椅子に座っていました。

 ここまでは、嬉しいことです。

 悲しいことは、母を美容院に送り届けて帰った後に起こりました。
 
 父が、胃瘻に差し込んでいたチューブを外してしまったのです。
 これは、初めてのことでした。そして、わけのわからなことを言い始めたのです。
 父は今、89歳で、これまで痴呆の兆候はありませんでした。だからすっかり安心していたのですが、意味不明のことをつぶやいて、チューブを外してしまったのです。なんとか説き伏せて、その後、チューブを付け直しましたが、今度は、栄養注入が終わり、静かに寝ていてほしい時に、チューブがないと騒ぎだしたのです。

 椅子に座って散髪ができたのはれしかったのですが、少し痴呆の兆候が見えてきたのが、気になります。