ホテルでの撮影は、圧倒的に屋上でのものが多かったのです。西新宿のビル街も見えるし、ホテルの屋上にはフェンスがあって、そのフェンスをバックにした撮影というのが多かったですね。

遺産争族というドラマに立ち会ったときは、向井理と、その妻役の榮倉奈々が、フェンス際でやり取りしているのを、ちょっと離れた距離から見ていました。

ただ、実際に見ているのは、スタッフの動きのほうです。本番のときは、スタッフも緊張しているので、大丈夫なのですが、撮影の合間に気がゆるんで、私語をしながら、無神経な行動に出て、屋上の設備を傷めたりすることがあります。

実際に、何の撮影の時だったか、屋上にある膨張タンクへ行く配管を破壊され、えらい目にあったことがありました。このことを話し出すと、膨張タンクの話だけで終わってしまうので割愛します。

吉瀬美智子のときは、フェンスに寄りかかりながら東京新聞を読む撮影を何テイクも付き合わされました。

小栗旬のときは、やたらと廊下を走るシーンでしたが、これも、下の客室にいるゲストに、あらかじめ言っておかないと、クレームになります。小栗旬は、思ったよりも背が高かったですね。

こいつはだめだと思ったのは、伊藤英明とかいう俳優。海猿という映画を見て、多少いいイメージがあったのですが、撮影時間に遅れてきて、チャラチャラしていました。

気配りができていたのは、最近はあまり見かけませんが、斉藤慶子。

それと、僕の中で、評価が上がったのは、中谷美紀。彼女は、僕たちホテルの人間にも丁寧な接し方をしてくれましたね。

僕が、はからずも注意する羽目になったのは、中村雅俊。

別に中村雅俊が何かしたわけではないのですが、スタッフと一緒に堂々と、ホテルの正面ロビーから入ってきたので、注意しました。

たとえ、そこそこ大物俳優だろうと、撮影の人間を正面からは入れさせません。そのことは、口が酸っぱくなるほど、撮影スタッフの責任者に言っておいたはずなのです。

それを守らなかったので、強い口調で注意しました。中村雅俊は何を怒られているのかわからず、きょとんとしていましたけどね。

ホテルには11年いましたから、撮影の話はまだまだあるのですが、今はとりあえず、思いだしたものだけを書いています。

また思いだしたら、書いてみますね。